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【北アルプスの魅力について】
山や、山登りの魅力について、私にもなかなかうまい説明ができない。そんな時に、非常に都合のいいのが、この北アルプスなのである。「山のどこがそんなにいいのですか?」「どうして山登りなんてものが面白いのだ?」というような質問を浴びた時、私は次のような返答を出すことにしている。「上高地でもいいから、とにかく一度北アルプスヘ行ってごらんなさい」
これではもちろん親切な回答にはなっていません。しかし、上高地へパスではいり、大正池や河童橋のほとりから、穂高の山々を見ただけで、たいていの人は、「いや君のいう通りだ。とにかく何ともいえない美しいところだね。山へ行きたがる君らの気持ちがよく判ったような気がするよ」といってくれる。
上高地というところは、俗化したとか、なんとかいわれてもとにかく北アルプス の魅力を代表する景観とムードを失っていない。やはり依然として北アルプスのメッカです。 しかし上高地にあるものだけが北アルプスの魅力の全てではありません。なんといっても上高地は梓川のほとりに開けた盆地であり、渓谷である。
標高は”五千尺”という有名な古い旅舘の屋号が示しているように、わずか千五百メートルに過ぎない。穂高にしても、焼岳にしても、霞沢岳にしても、見上げた山岳美である。それだけでもアルプスに似た山岳景観を楽しむことはできるが、その遥かな高みにこそ、さらにいっそう美しくて、荘厳で、神秘的なものがあるのです。いいかえれば未知の世界がその雲の上にひろがっているのです。
私たちはこの雲表の世界に限りなき憧れをもつ。未知の世界の扉を開こうという欲望だ。未知の世界というものは、なにも北アルプスに限ったものでは、ありません。どこの山にも、どこの海にも、またどこの平原にもあります。北アルプスの場合は、この未知の世界というものが三千メートルを上下する雲表にある。その世界を覗きたいという情熱が、山仲間たちの間に燃えあがるのは当然すぎる当然であろう。
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